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最高裁者

人間マット

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人間マット

靴底を磨いて、とお嬢様が言葉を投げた。人間マットは彼女の前に跪き、右足のハイヒールを両手で支える。触れたハイヒールから自分を踏みたがっている意志が伝わり、緊張が彼をつつんだ。靴底に口を近づけ、舌で靴底に触れる。にがさで顔を歪める。舌の動きがとまる。目をかたく閉じると、また、舌を動かす。

この繰り返しをお嬢様は優しい顔で見守っている。やがて、両方の靴底をきれいに舐め終えると、ありがとう、とお嬢様。嬉しさがふくらみ、人間マットはお嬢様の前で腹ばいになる。いいわよ、とお嬢様の右足のハイヒールがまず人間マットの後頭部を踏んだ。左足のハイヒールの靴底が地面から離れる。すると後頭部を踏んだ右足のハイヒールのちいさな踵に彼女の信じられない重みが集まった。

この靴、お箸より軽いのよ、はき心地もいいの、とお嬢様。いっぽう、人間マットは、鉛筆のような細いヒールにのった、大人の女性の現実の重さをささえている。お嬢様は、人間マットの頭からつま先まで往復し、最後は背に落ち着いた。全身の皮膚がつっぱり、人間マットは、そのあいだ、苦悶の顔を地面に強く押しつけていた。お嬢様は、背で、ハイヒールをきれいにならべると、軽いでしょ? と優しい声をかけた。
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